実習生受入れとリスク管理

実習生を受入れるにあたっては、当然ながら様々なリスクもあります。
それは、日本人を採用するときと同じリスクもありますし、実習生に特有のリスクもあります。 
以下では、「実習生に特有のリスク」にはどういったものがあるか、そしてどうすればリスクを小さくすることができるかについて紹介します。       

1.実習生による問題

失踪  

実習生受入れのリスクとして最初に思いつくのが失踪でしょう。テレビや新聞などでも「実習生が劣悪な環境下に置かれていて失踪した」という報道を度々耳にするのではないでしょうか。
ここで大事なのは、実習生は「劣悪な環境下に置かれて」いるから失踪するということです。日本人社員やパートと同じように給与を適切に設定し、残業代をきちんと支払い、自分が住める清潔度の寮を準備し、人間関係に大きな問題がなければ通常実習生が失踪することはありません。

実習生同士の喧嘩・トラブル

実習生はほとんどの場合、同僚の実習生と同じ寮で共同生活を送ることになります。実習生も人間ですから、どうしても反りが合わないこともあり、些細なことが発端となって喧嘩したりするようなこともあります。
日本人同士でもそうですが、一度他人のイヤな部分が目につくと、そこばかり気になってさらに相手への嫌悪感を増すということがあります。
そうなってしまってから状況を改善するのはかなり難しいので、実習生選抜段階から危機管理を行い、入国後も受入企業・組合・実習生の三者がコミュニケーションを取りやすくしておき、兆候が見られれば早めに対応することが大切です。

日本語が上達しない

実習生を受入れると、現場から「日本語が上達しない」という声が聞かれることがあります。
一口に「上達しない」と言っても、勉強してるのに上達しないのか、勉強する気がないのかで対応は大きく変わります。特に、学習意欲のない人にどうやって勉強させるか。これは教育分野における永遠の課題でしょう。
こういった実習生が出た場合、その実習生の個性に合わせた対策を取るしかありませんが、そうならないためにも面接時の実習生の見極め、入国前講習での勉強する習慣付けが大切です。
また、入社してからは日本人から積極的に話しかけることで実習生の会話レベルはかなり変わってきます。その際は、実習生に対してはゆっくり話す・短い文に区切って話すというのも有効です。

近隣トラブル(ゴミ出し・騒音)

日本はゴミの分別の細かさ・騒音への厳しさは、世界トップクラスでしょう。
実習生の母国であるミャンマーやベトナムは、もちろん日本ほどゴミ分別や騒音にうるさくありません。
逆に言うと、実習生にとってみれば、日本がどのくらい厳しいのかが実感できません。このため、実習生が現地基準で何気なくベランダで歌を歌うと、隣の部屋の住民からクレームが来るといったことがあります。
この問題を未然に防ぐには、事前教育しかありません。現地で行う入国前講習で送出機関がいかに厳しく生活指導をするか、日本に来て1カ月間の入国後講習できちんと日本基準を定着させられるかに懸かっています。

また、入社後(入寮後)にそのような問題が起きた場合は、すぐに厳しく指導し、このレベルの音はダメなんだと自覚させ、同じ問題を起こさせないようにすることが大切です。

2.受入企業の対応

技能実習機構からの処分

技能実習制度を監督する技能実習機構は、3年に1回のペースで実習生の受入企業を立入検査するとしています。
このときにチェックされる内容を大きく2つに分けると、「技能実習機構に届出たとおりに実習をしているか」と「実習生の権利が侵害されていないか」です。

適正な実習の実施

実習生を受入れる際には、実習生の労働条件や受入企業の体制などのヒアリングを組合から受けます。
これに基づいて技能実習機構への手続きを行うので、条件や体制を変更する場合は組合への連絡が欠かせません。
この部分の意思疎通がうまくできておらず、技能実習機構への届出なく条件変更をしていると、立入検査の際に注意を受けることがあります。
事実、届出より高額な寮費を実習生から徴収していたとして、受入れ停止処分となった企業もあります。

なお、立入検査で職種違いや残業時間の大幅な超過などが発覚すれば、もちろん受入停止などの厳しい処分が下されます。

実習生の保護

現行の実習制度は、実習生の保護に大きく重点が置かれています。
技能実習機構の立入検査の際には、残業代の不払いなど労働法に違反していないことはもちろん、実習生に不利な取り決め(違約金・強制帰国など)をしていないか、寮の広さ・設備が基準を満たしているかなどがチェックされます。
とはいえ、何がOKで何がダメか、どういった場合に処分を受けることになるのかをすべてを把握することは、受入企業にとって負担となるでしょう。そのためにも、組合(監理団体)とコミュニケーションを密に取り、毎月の訪問指導や3カ月に1回の監査のときに、実習体制に問題がないか細かく確認してもらうことが大切です。

3.組合(監理団体)の対応

実習生受入れ成功の可否は、どの組合を使うかで決まると言っても過言では有りません。
詳しくは組合選びのポイントで解説していますが、提携する組合によって実習生管理・教育への力の入れ具合が大きく異なり、結果的に入社してくる実習生の能力が大きく変わってきますし、入社後のトラブル時の対応にも差が出ます。
実習生受入れにあたって様々なリスクを低く抑えるためには、実習生管理・教育を重視している組合を選ぶのが一つの方法です。